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 意匠


講演等の要旨

日本基礎心理学会 2003年度公開シンポジウム(2003.7, 北海道大学)公開実験
「色彩と運動の知覚に関する公開実験」

講演者  北海道大学 川端康弘・田山忠行

要旨(色彩の部分のみ抜粋)

 色彩は明暗(白黒)と同様に、人間の様々な知覚・認知過程に貢献している。色は明暗とともに環境内の時空間的境界(エッジ)を検知して物体を見つけだし、複数の物体からなるシーンに配置するという視覚の根幹的仕事に関わっていると思われる。もちろん白黒の視覚(霊長類以外の動物では割とポピュラーである)でも対象を見つけることはできるが、例えば緑の葉で覆われた木から赤い実を見つけるのはかなり困難な仕事である。私たち人間は環境内の豊富な色情報を有効に利用しているが、そのために脳内の多くの神経細胞が色処理の仕事を受け持っている。この公開実験では、プロジェクターに投影される画像を利用して、色彩の残効(残像)、対比および同化などの現象を観察することによって、人間の色彩視のメカニズムとはどのようなものであるのか考えてみる。
 (1)色残効       明るい色パターンがしばらく呈示されて、その後に消失した場合、消えた色がしばらくその後の見えに影響を与える。これは色の残効現象として知られており、色紙を使って簡単に実施することができる。たとえば灰色の色紙の中央に置かれた青あるいは赤の小さな色紙を1〜2分固視してから、青あるいは赤の色紙を取り除くと、灰色の一様な色紙の上に色残効を観察することができる。
 (2)色の対比と同化   私たちが見ている物体の色は、その周囲にどんな色のものがあるかによって驚くほど変化する。たとえばある色が隣接する色の影響で違った色調に見えることは、著名な芸術家であるレオナルド・ダ・ヴィンチもその著書で指摘している。このような現象は、芸術やデザインなどの専門家ではなくとも、私たちが日常的に経験することであり、人間の感覚・知覚に伴う特性として、実験心理学の分野でも古くから取り上げられてきた。
 その他、時間的余裕があれば、ネオンカラースプレッド、主的輪郭、プルキニエシフト、ヘルマン格子などといった現象を扱う。




日本心理学会第65回大会(2001.11, 筑波大学)小講演
「ビジュアルシーン内の境界と物体の把握における色の役割」

講演者 北海道大学 川端康弘
司会者 神奈川大学 三星宗雄

要旨
 物体の境界を構成する色コントラストを適切に取り出すシステムとして色覚を捉え、ビジュアルシーンを認知するためにどのように貢献するかを考察する。
 色彩は際だった特徴として物体を目立たせる。これはあくまで、色の境界と同時に存在することが多い輝度境界を際だたせる補助装置としての役割なのだろうか。色は明確なコントラスト階調を持つ刺激属性であり、この点では輝度とほぼ同格と言える。また多様な視環境で色彩は輝度よりもむしろ安定した情報源である場合もある。輝度は時空間的に詳細な変化をよく検出できるが、一方、色彩は時空間の大局的変化の検出において優位であると考えられる。色彩は輝度とともに時空間的境界を検出し、物体を切り出し、複数の物体からなるシーンに配置するという視覚機能の根幹的仕事に関わっていると思われる。
 ここではそれを裏付ける大布置の刺激を使った実験研究をいくつか紹介する。その際、白黒変調と同様に単一次元である飽和度変調を利用する。自然界において高い飽和度や複数の色相変調を持つ対象はわずかであり,白が中心の低い飽和度次元の感度特性は重要である。
 また色覚障害者による境界検出についても考察する。多くの研究では障害者の色の見えが健常者より劣ることが強調される。色システムは精緻に進化してきたが,それゆえ多くのユニットが必要で,神経系として犠牲の多いシステムである。こうした関点から色覚障害者の視覚システムの機能を再検討する。




日本心理学会第61回大会(1997.9, 関西学院大学)ワークショップ「光環境と人間の生活」
「高所における視環境と色処理特性の異なる視覚システム」

話題提供者 北海道大学 川端康弘

要旨
 空気が乾燥し、見通しの利く高地では、かなり離れた距離にある景観でもはっきりと見ることができる。北インドヒマラヤでの3ヶ月ほどの登山隊での生活で、正常3色型の筆者と2色型第2視覚のAさんではかなり見え方に違いが見られた。視力は両者とも2.0以上であるが、概してAさんの方が,細部の解像特性に優れているようであり、偵察者として有能であった(緑の森で赤い果実を見つける仕事なら別であろうが)。
 後の様々な順応条件での実験から、Aさんと筆者では光学系の影響を取り除いた時空間的な解像能力において違いが見られた。色処理システムは物体の識別に有効なものではあるが、上記の例はそのシステムの低解像性が視覚処理全体に影響した場合と言えるだろう。
 色処理システムは神経系としても犠牲が大きく、他の視覚モジュールに与える影響も考慮せねばならない。このシステムの欠損は確かに色処理を損なうが、ある場合には他の視覚処理の精緻化を促すのではないだろうか。


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